
Twitterでいろんな投資家さんを見ていると、"配当好き"が実に多いことに気づきます。
高配当銘柄「JT」「ソフトバンク」「三菱商事」……に投資しています!
高配当ETF「SPYD」「VYM」、増配ETF「VIG」……に投資しています!
まず私の個人的意見ですが、私は配当金(や分配金)が多いからという理由での銘柄選定は絶対にやりません。
むしろ「配当金なんていらないから株価をあげてくれ」と思っているくらいです。
※配当重視の投資方針を否定しているわけではありません。あくまで私の意見です。
なぜそう考えるか。
それは単純に資産形成が遅くなると思うからです。
――今回は、資産形成における"配当"について考えてみたいと思います。
※あくまで「資産形成が目的の方」が対象です。配当そのものが目的の人は今回のお話の対象外です。
ただし、結論を単に「配当銘柄は非効率である」ということろに持っていきたいのではありません。
何かを論証するというよりも、
なんとなくで高配当銘柄に飛びついている方がいたら、ちょっと立ちどまって考え直してみては?
と投げかけをするだけです。よろしくお願いします。
「高配当」が人気の理由
Twitterでいろんな方から意見を聞き、なんとなくわかってきたことがあります。
それは、配当を重視する方の多くが以下のような見解を持っている傾向があるということです。
1.配当金を受けとるたびに、投資活動による成果が確定されたようで気持ちいい
2.配当金を受けとって再投資することで、"複利の力"がはたらいていることを実感できる
3.株価が下がっても配当金をもらえていれば気が楽。投資で"失敗した"感じがしない
4.配当を再投資しなければ"複利の力"を得られないのだから、配当銘柄を重視するのはあたり前
5.より配当を多く受け取ることで、他の投資方法より運用成績がよい
1.~3.は単に感情の問題です。経済合理性を追求したものではありません。
でも悪い考えではありません。
感情をコントロールすることは投資において重要ですので、このような考えはむしろいいことと言えます。
投資で重要なのは、とにかく長く市場に居つづけることです。
それをわかった上で、長く投資をつづけるための安定剤として高配当重視のスタンスをとっている方もTwitterにはいらっしゃいました。
特に2.は、お気持ちはよくわかります。もうけを実際に手に入れて、それを再度投資にまわしているという"体験"が、腑に落ちますもんね。
誤解していませんか?
ところが、4.と5.は毛色がちがいます。
4.配当を再投資しなければ"複利の力"を得られないのだから、配当銘柄を重視するのはあたり前
5.配当をより多く受け取ることで、他の投資方法より運用成績がよい
まず4.は完全に誤りです。
配当が無いもしくは少ない銘柄(投信やETFふくめて)をずっと持っていることでも複利の力の恩恵は受けられます。
よくある誤解ですので、はやめに軌道修正されることをおすすめします。
てっとりばやく理解するにはこちらの記事をごらんください。
さて5.も誤りです。
2つ理由があります。
1つは、配当金(分配金)を受けとるたびに課税されることです。
せっかくもうけが出たのにその一部(20.315%)が目減りします。
例えば配当金が10万円だとしたら約2万円を税としておさめることになります。この2万円は、年利7%で運用できたら10年後には4万円近くになっているはずのものです。
配当金を受けとるたびに、少しずつ投資の機会を損失しているといえるので、資産形成のスピードがはやいとは言えません。
もう1つは、配当再投資は、値上がり益を期待する投資方法に対してトータルリターンでおとることです。これは過去の実績が示しています。
そもそも高配当銘柄は、比較的、株価が上昇していく力が弱いことが特徴としてあります。その差を配当再投資でおぎないたいわけですが、それでも負けています。
高配当銘柄ではないVTI(全米株式インデックス)と、人気の高配当ETFとを比べてみましょう。
こちらのサイトでどなたでも検証できます。
Backtest Portfolio Asset Allocation
※配当再投資の結果を見るには、Display Income: Yes, Reinvest Dividend; Yes と設定します。


どちらも「配当を再投資する」オプションをオンにして比較しています。SPYDもVYMもVTIに劣後しています。
高配当銘柄で配当再投資しても、VTIを上回れないというまぎれもない事実です。
もちろん未来はどうなるかわかりません。
であれば、SPYDやVYMに投資する意義は、先程の1.~3.の感情を維持する以外にあるでしょうか? みなさん自身でお考えいただければと思います。
なぜこうなるのか?
理由のひとつに、経費率があります。
これらのETFの経費率は、
VTI : 0.03%
VYM : 0.06%
SPYD : 0.07%
となっています。
構成銘柄が値上がりしても、VYMやSPYDはVTIとくらべ倍以上の信託報酬がファンドに持っていかれるのです。トータルリターンで劣後するのは当然ともいえます。
小淵の分配金の使いみち
というわけで、配当重視の投資スタンスについて見てきました。
投資をつづけること、市場に居つづけることは何より重要です。配当をより多く得ることがその助けになるなら、配当重視スタイルも意味があると思います。
しかし、資産形成のスピードはおそらく落ちます。トレードオフの関係ですので、どちらがいいかという答えはありません。投資家一人ひとりが自分の意思で選択すべきことだと思います。
もし"なんとなく"で「高配当じゃなきゃ!」と思っている人がいたら、一度よく考えてみてはいかがでしょうか。
VTIの分配金が入りました
今回、私はVTIの分配金を受けとりました。

337.35ドルのうち税金で95.4ドル(約10,000円)持っていかれました。
10,000円を年利7%で運用できれば、20年後に約40,000円になるはずです。
40,000円になってから売却すれば、売却益への課税20.315%で、約8,000円の納税で済みます。
いま失う10,000円と、20年後に失う8,000円。なんてもったいない……。分配金なんかなくていいとさえ思います。
まあ、そう愚痴をいってもしょうがないことです。
この分配金はすぐに、全額VTIへの再投資に回しました。

この記事がためになったと思ったら、クリックおねがいします☆