
Twitterで先日、こんなツイートを発見しました。
保有している「銘柄A」の含み益が+30%になった。今のうちに売って、同じ「銘柄A」を買い足したほうがいいよね。
そうすれば複利の力が得られる。
引用元は割愛します。
また、別の方はこんなことを言っていました。
利確して現金を手にしなければ投資で成功したことにはならない。
含み益があるだけでは、銀行に預けているのと変わらない。
引用元は割愛します。
ここまで読んで、バカバカしい……と思った方は、これ以降この記事を読む必要はありません。
え、違うの? 何かおかしいの? と思った方は、絶対に最後まで読んでください。勘違いを修正します。
勘違いをしたままだと、あなたの生涯にわたる投資の成果はかなり悪くなるでしょう。
本記事の話は、インデックス投資でも個別銘柄への投資でも、株式投資ならまったく同じ原理です。
※債券でも同じ。
目次
ただ保有し続けるだけでいい
まず「複利」とは何かを確認しましょう。
簡単に定義だけいえば、
複利とは、元本にも利益にも利回りがかかること。
複利とは、利息が利息を生むこと。
です。同じことを違う言い方で言っています。
この説明だけでもう他にいうことは無いのですが、まだ勘違いされている方が多いと思うので、引き続き事例で説明してみます。
これが複利の力だ
例えばあなたは現金100万円でB社の株式に投資したとします(=株式を購入しました)。
「期間n」が経過し、あなたの保有銘柄の評価額は105万円になっていました。
なにも売買をせずそのままずっと保有し続け、さらに「期間n」が経過しました。最初からかぞえて「期間2n」が経過したことになります。
※「期間2n」とは「期間n」の2倍の時間という意味。
すると、評価額が110.25万円になっていました。
そのまま「期間3n」が経過しました。評価額は約115.76万円になっていました。
ここでいうnは、1ヶ月でも6ヶ月でも1年でも10年でもいいんです。
一定の期間が経過したごとに、ちょうど5%ずつ資産評価額がふえていったことがわかります。
n経過後: 100万円 ✕( 100% +5% )= 105万円
2n経過後: 105万円 ✕( 100% +5% )= 110.25万円
3n経過後: 110.25万円 ✕( 100% +5% )= 約115.76万円
ふえた率は5%で一定ですね。こんどはふえた"金額"を見てみます。
n経過後: 105万円 - 100万円= 5万円
2n経過後: 110.25万円 - 105万円 = 5.25万円
3n経過後: 約115.76万円 - 110.25万円 = 約5.51万円
このように、期間nごとの利回り(%)は一定であるにもかかわらず、ふえる金額がふえていきます。
nから2nになる間に、元金の100万円も5%ふえ、利益の5万円も5%ふえました。「複利とは元本にも利益にも利回りがかかる」「利息が利息を生んでいる」ということがわかったのではないでしょうか。
これが複利の力であり、株式投資です。
この間、売っても買ってもいません。何もしなくていい。保有しているだけでいいんです。
利確(売却して現金入手)して再投資(再購入)しなければ複利の力は得られない、というのは、明らかな間違いです。
都度売却した場合との比較
逆に、含み益が出るたびに売却し、同じ銘柄を再購入した場合の評価額の変化を計算してみました。
ここでは「期間n」を「1年」としました。

スタートを100万円とし、期間中に元金の追加(手出し)は無いものとして比較した場合、20年後に約46.2万円、約17%の差がつきました。
買付手数料と売却手数料を無視してシミュレーションしました。そのため、実際はもっと差がひらきます。
この差がつくのは、含み益の売却時に約20%課税されるからです。5万円分売却したら、手元に来るのは約4万円です。
そして同じ銘柄に再投資するとき、4万円分しか購入できません。
あるものを5万円で売って、すぐ4万円で買い戻す。普段の生活でそんなことします? 無駄でしょう。毎回20%ずつ資産を捨てていることと同じです。
複利はマイナスにもはたらく
実際は、ある期間nに必ず5%ふえると決まっているわけではありません。
1%しかふえないこともあれば、10%ふえることも、マイナスだってあります。
コロナショックでは、全米株式の平均は-30%以上下落しました。
元金だけでなく、利益にも-30%されます。
売却に意味があることもある
ここまでの話は、ずっとその銘柄を保有し続けるときの話です。
株式投資の運用では、株価が上げて含み益になったら売って(利確して)、下げたらまた買ってという、タイミング売買のやり方もあります。
そういう場合は、当然売却することに意味はあります。
でもそれは複利の力の説明にはまったく関係ありません。複利の力の恩恵を受けるための売却ではなく、別の買い物に使う現金を入手するための売却ですから。
「投資をやる」って、何だろう?
そもそも、「投資をやる」って、どんなイメージでしょう?
銘柄選択と売買注文を頻繁にやることでしょうか? はたまた、定期的に現金が手元にくること?
平均的な日本人なら、このように思う人が多いのかもしれません。
とくに、このツイート、
利確して現金を手にしなければ投資で成功したことにはならない。
含み益があるだけでは、銀行に預けているのと変わらない。
引用元は割愛します。
これと同じような発言をしている方を、Twitterで何度も見かけたことがあります。
どうも「現金がふえた」ということに「投資の実感」を得ておられるようです。
日本では、どんな場合であれ株式を現金に変えるときには、お上に税金をおさめなければなりません。
つまり、「現金入手」の実感を得ることと引き換えに、資産が目減りすることを受け入れなければならないのです。
"銀行預金と変わらない"という感覚
銘柄選択と売買注文を頻繁にやることや、こまめに現金化することは、数ある投資手法の一部分にすぎません。
投資に詳しくないし時間もかけたくない個人投資家がで成功する最も有望な手法は、インデックス投資です。
インデックス投資の正攻法では、20年や30年という長期間、保有資産を売却しません。
ずっと証券口座の中にあって、ただ含み益が積み上がっていくだけです。
そして、現金が必要なときがきたら(引退後とか、大きな出費のイベントとか)、必要な分だけ売却して現金化すればいのです。「出口戦略」とか、大仰なことを考える必要も別に無いのです。
インデックスファンドは、流動性が高い(好きなときに売れるし買える)。まさに、銀行の預金、ATMからお金を下ろすのと同じです。
残高がふえたり減ったりしつつ、長期的にはふえていく預金、という感覚でいいじゃありませんか。
「投資の実感」を得たいあまりに目先のキャッシュを求めると、生涯のトータルリターンをかなり毀損してしまうでしょう。
配当重視の投資スタイル
"高配当"銘柄ばかりを保有する投資スタイルにも同じことが言えます。
配当を受けとるたび、基本的に約20%ずつ納税します。
納税しなければ、この先何十年と運用してふえていったかもしれないお金です。
目先の現金って、本当に必要ですか? (どうしても必要な場合だけ、配当重視スタイルをやるかどうか考えればいい)
こちらの記事も参考にしてください。
教訓
本記事の主旨とは少しずれますが、
Twitter・ブログ・YouTubeは魔境である
という話を1つして終わりにしたいと思います。
上記のメディアは、投資を学ぼうとする人が安易に立ち入っていい領域ではありません。
中にはいい情報もありますが、無駄な情報(ノイズ)、投資成果を下げようとする誘惑、完全に誤った情報、であふれかえっています。
いい情報だけにあたるのは、初心者ほど難しい。
「普通の人」が投資で成果を出すやり方は簡単なのに、Twitterや投資ブログ、YouTubeには、複雑にして手間をかけさせたり、投資の成果を落とさせたりする情報が非常に多い。
冒頭の2つのツイートですが、前者は、なんとフォロワーが1万人以上もいる(Twitterの株クラスタでは)有名人のものです。
普段から株式投資について精力的に発信されているようですが、こんな超基本的なことを知らずにいる方もいます。
※この方を攻撃する意図はありません(説明したらご本人は納得されました)。あくまで一般論です。
フォロワーが多くたってアテにならないのです。
私は再三にわたって言っていますが、Twitterやブログで何かを学ぼうとするのは、非常に危険がともないます。
こちらの記事も参考にしてください。
これらメディアは、素人の集まりです(当然、私もふくめて)。フォロワーが多かろうが、チャンネル登録者数が多かろうが、全員、どこの馬の骨ともわからない素人です。
そして、これらメディアの投資クラスタは、広い投資の世界に対してはゴマ粒ほどの影響力しかありません。資金力・情報力で他を圧倒する機関投資家が8~9割を占める株式市場にあって、有象無象の烏合の衆にすぎません。
有益な情報なんて、取れないと思ったほうがいいです。
有益な情報は、唯一 当ブログの「知識・ノウハウ」カテゴリ に集約されています。(そう言うしかありません)
しかし、このブログの情報が有益かどうかの判断を読者の皆様自身の頭で下さなければならないという問題は、いつまでも残り続けます。
私も烏合の衆の1人ですから。

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