
Twitterなどでは「インデックス投資は資産がふえるスピードが遅い」という意見をよく目にします。
その対応策として、
若いうちはアクティブ運用をして(または一部取り入れて)資産をふやせばいい
という考えを併記している人もいます。
本記事では、われわれ普通の人がこういった意見を目にしたときにどう考えればいいかについて、私の意見をのべたいと思います。
こういう視点もあるんじゃないかな、という私的な考えです。
ここでいう普通の人とは、投資が目的(趣味やエンタメ)ではなく、投資に自信があるわけではなく、投資期間を長期でとれる人です。
目次
インデックス投資は遅いのか
例えばS&P500なら、この20年間で時価総額が約2.5倍に増えました。(年利約4.7%、インフレ考慮前)
※40年間なら約26倍。(年利約8.0%超、インフレ考慮前)
低コストのインデックスファンドに投資していれば、われわれ個人投資家もこの恩恵を受けられました。20年間何もしなくても、資産がほぼ2.5倍に増えたのです。
このスピードが遅いと感じるか早いと感じるかは、ひとまず「人それぞれだ」と言って差し支えないでしょう。
スピードは相対的なもの
ではこの「インデックス投資は遅い」という意見をよく目にするのはなぜでしょうか。
少し踏みこんで考えてみると、スピードが遅い・早いと論じるのは、なにか別のものと比較しているからではないでしょうか。
他の投資家が1年で2倍にも資産を増やしているのに自分は……
個別銘柄◯◯はテンバガーになった。あのとき買っていれば……
40歳までに1億円にしたいのにインデックス投資だけでは間に合わない!
投資についてあれこれ調べていると、いろんな情報が目に入ってきて、こんなことを思ってしまいますよね。
そのうちだんだんと「私の投資(インデックス投資)は遅いんじゃないか、損しているのではないか」と思ってしまう。こういう構図があるのではないでしょうか。
隣の芝はいつも青い
自分だって十分もうかる可能性が高い投資をしているのに、はやく結果を出している他人の存在を知ったせいで、損だと思ってしまう。これは人の性です。
損だと思ってしまうと、あやまった投資行動に走ってしまうことがあるので、注意が必要です。
他の投資家が1年で2倍にも資産を増やしているのに自分は……
個別銘柄◯◯はテンバガーになった。あのとき買っていれば……
この2つはもっともらしく聞こえますが、猛スピードでもうかった投資家の裏に、失敗して消えていった投資家がたくさんいることを思い出しましょう。
自分が的確に銘柄選択できるかや、タイミング売買を成功させられるかどうかは、事前にはわかりません。結果論でしかありません。
それに、Twitterでもブログでも一般社会でも、人は成功体験を語りたがり、失敗体験は隠したがるものです。
投資に関する世間の評判や大衆の意見は、実は一部の成功者によって発信されたものから形成されていたりします。
ですから、インデックス投資の成績を大きく上回った人のことは、あまり気にしないほうがいいと私は思います。
そういう幸運な人はつねに一定数います(不運な人はもっと多くいます)。それだけのことです。あなたは別に損はしていません。
遅く感じるのは自分のせい!?
40歳までに1億円にしたいのにインデックス投資だけでは間に合わない!
この意見もよく見かけます。
インデックス投資の長期の平均年利5~8%(過去実績)を、自分の投資可能資金にあてはめてシミュレーションをされたのでしょう。
私は、そもそもこの考えは非常に危ないと思います。
こちらの記事にも書きましたが、株価は、私たち個人がコントロールできるものではありません。
そのため、ライフプランの成否を投資の成果に依存しすぎるのは、得策ではないと思います。
自分の人生を劇的に変える力を持っているのは、投資の巧拙というよりもむしろ、収入と支出管理でお金を作り出すことだと思います。
なので、「インデックス投資では遅い」となげくのはお門違いで、「私の収入じゃ40歳までに1億円に届きそうにない」という態度が望ましいと思います。
じゃあどうするか。
――あきらめるんです。
40歳でマイホームを買うのも、早期退職し資産を取り崩して生活する人生にシフトするのも、世界を旅しながら豪遊して暮らすのも。
インデックス投資の成果以上のものを投資に求めることは、"普通の人"はあきらめた方がいいと考えます。
残酷ですがしかたありません。
この方の場合、収入が低く(または支出が多すぎて)、そんな生活を送るに値しないのですから。
そもそも、この方にとって40歳で1億円という目標は、高望み、夢のまた夢、身の丈に合っていないということです。
投資の成否で人生をどうにか変えようとするよりも、確実なのは働いて、かせいで、支出をおさえて、あまったお金をためる(または投資する)こと。
まずはそこが優先だと思います。
インデックス投資を着実に継続できたとして、20年で2倍から5倍(過去実績)。資産の増え方はその程度が関の山。ただし大きな失敗は少ない。
インデックス投資をやるならこのまず事実を受け入れないといけません。
「若いうちは」という前提
アクティブ運用はたいていパッシブな運用より大きなリスクをとります。
若いうちにリスクを大きく取るというのは、一理あると思います。投資で失敗しても、働いてかせいで挽回するための時間が多くありますからね。
でもそれは、「若ければみんなアクティブ運用をやっていい」というのとは違います。
リスクのとり方に対する考えは人それぞれで、若いからといって誰もが大きなリスクをとれる(とるべきだ)というのは、まったく間違っていると思います。
若くても堅実に、適正なリスクの範囲で投資をしたいという人はいます。
投資で失敗したら、ある時「もう投資にたよらず自分のかせぎで挽回しよう」と決意することになると思いますが、たぶん挽回ってすごく大変です。
若いからなんでも挑戦するべきだという考えには、投資以外の分野では私は同意します。が、失敗すれば明確にお金を失う投資においては、100%賛同することはできません。
アクティブ運用はすべきか
こんなことをいうと四方八方から総攻撃をくらいますが、私はあえて言いたいです。
"普通の人"は、アクティブ運用するな、と。
市場平均にパッシブ投資してバイアンドホールド戦略でいるだけでいいと思います。
ただし、自分のリスク許容度に応じて適切な比率の無リスク資産(現金など)を持つこと。
手法としては、広く分散された時価総額加重平均のインデックスファンド(全米や全世界)を買うだけです。
難しいことを考えるより、長期にわたって平均点を取り続けることがいかに強いかを、別の角度から考えてみたいと思います。
1,000人のアクティブ運用投資家
株式市場には、市場平均をアウトパフォームする(上回る)投資家とアンダーパフォームする(下回る)投資家が必ずいます。
「市場平均」というくらいなので、仮に、毎年、50%の投資家がアウトパフォームし、50%の投資家がアンダーパフォームすることとしましょう。
※実際はきっかり50%、50%というわけではありませんが、この後のたとえ話をするには問題ないでしょう。
※実際は、売買手数料や課税によりアクティブ運用は不利なので、市場平均をアウトパフォームする投資家は49%、48%…など50%よりいくらか少なく見積もってもいいでしょう。ここでは簡単に50%としますが。
アクティブ運用する1,000人の投資家が1年間運用したら、50%、500人の投資家が市場平均に勝ちました。残りの500人はあえなく市場平均を下回ってしまいました。
次の年もまた1年間運用して、1年目にアウトパフォームした500人のうちの50%、250人が市場平均に勝ちました。
2年連続で市場平均に勝てた投資家は全体の25%、250人になってしまったというわけです。
※1年目に負けたが2年目に勝ち、2年トータルで結果的に市場平均に勝てた投資家も中にはいるかもしれませんが、ごくわずかでしょうから無視します。
このようにして、◯年連続でアウトパフォームし続ける投資家は毎年半分ずつ減っていきます。
1,000人→500人→250人→125人→約63人→約31人…………
計算してみると、10年後に、10年間勝ち続けられた投資家はたったの1人になりました。
アクティブ運用で10年間投資を続けて市場平均に勝つには、1,000人の中の1人にならなければいけないのです。
もっと多くの人がアウトパフォームできるはず?
例えが厳しすぎると思いましたか?
じゃあ、市場平均に勝てる投資家を80%に設定してみましょう。
※そんなことはありえなさそうですが。
アウトパフォームする投資家の人数は、毎年、
1,000人→800人→640人→512人→410人→328人…………
と減っていきます。
計算を続けると、連続して市場平均に勝てた投資家は、10年後に約107人、20年後に12人、30年後に1人となります。
かなり甘く見積もってもこのくらいです。
アクティブ運用の厳しさ
現実世界をごく単純化したこのモデルで、おおよそアクティブ運用の厳しさがわかったのではないでしょうか。
また小淵がアクティブ運用をディスっている、と陰口を叩かれるでしょうが、アクティブ運用するにはこういった事実を受け入れることが重要です。
アクティブ運用をすすめるインフルエンサーやYouTuberに影響されて、安易に飛びついてしまうのは危険です。
(このモデルが正しいなら)インデックス投資をしてさえいれば、30年後に、1,000人の投資家の中で2番目の成績をおさめられるのです。
どちらがいいかは、投資家自身の頭で考えて判断しなければいけません。最悪なのは、"なんとなく"アクティブ運用をして資産をふやそうとしてしまうことだと思います。
インデックス投資も万能ではない
インデックスへのパッシブ運用(インデックス投資)を始めるのは簡単です。
でも、問題もあります。
景気後退期などに、保有するインデックスファンドが大きく値下がりしたのを見て、途中で売却して投資をやめてしまうとダメです。
市場タイミングを見計らってインデックスファンドを売買しようとしても、うまくいかないことが多いです。
市場平均を長期でなぞるにはバイアンドホールドすればいいのですが、それを継続するのがむずかしいと言われています。
※そもそも、今後ずっと右肩上がりであることが約束されているわけでもありません。(何十年後に元金を割っていることもありえます)
途中でインデックス投資をやめてしまわないよう、投資を始める前に、
長期間投資してもいいと思えるインデックスファンドを選ぶこと
自分のリスク許容度に応じて適切な比率の無リスク資産(現金など)を持つこと
この2つがキーになると思います。
適切な現金比率を計算するには、ぜひこの記事を参考にしてください。
さいごに
もしあなたが大きなリスクをとれて(年齢は関係ない)、アクティブ運用で長期間市場平均に勝ち続ける厳しさをわかった上で、
なお市場平均を超えたいと思うなら、アクティブ運用をすればいいと思います。
逆に、市場平均をとっていくだけで十分と思うなら、アクティブ運用はやるべきではありません。(あたり前ですね)
※市場平均をなぞるインデックス投資でさえ、リスクは大きいです。しかしインデックスファンドならある程度リスク管理ができます。
私は、インデックス投資をこれからも続けるつもりです。
一度だって市場平均に負けたくないので。

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