
Twitterやマシュマロ(匿名質問投稿サービス)で過去に複数回受けたことのある質問とその回答をまとめました。
Twitterアカウントはこちら → Twitter@obuchi35kara
マシュマロ経由で質問する場合はこちら → 小淵(おぶち)のマシュマロ
目次
- 1.なぜ投資信託ではなくETFのVTIに投資しているんですか?
- 2.VTでもVOOでもなくVTIを選んだ理由はなんですか?
- 3.一括投資と時間分散購入(ドルコスト平均法など)、どちらがいいですか?
- 4.VTIをどのタイミングで買えばいいかわかりません!/ 高くて買えません!
- 5.VTIを買うとき円貨決済していますか? ドル決済していますか?
- 6.VTIのように米国市場のETFを買い付けてドル運用するのと、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)などの投資信託で円で運用、どちらがいいですか?
- 7.株式市場のほとんどをインデックス投資が占めるようになったらどうなりますか?
- 8.債券も持つべきではないですか?
- 9.出口戦略をどう考えていますか? 取り崩すのに抵抗はないですか?
- 10.投資信託で全米株に投資しているのですが、インカムゲインがなく複利の力が効いているのか不安です。
- 11.保有しているインデックスファンドに含み益が出ています。ここまま持っていても複利の力が働かないので、一旦売ってすぐ同じファンドを買い直すべきですよね?
- 12.VTI以外に買う予定のETFはありますか?
1.なぜ投資信託ではなくETFのVTIに投資しているんですか?
特にこだわりがあるわけではありません。
正直いいますと、インデックス投資を始めようと思ったときに、投資信託という考えがまったくありませんでした。(不勉強でした)
「VTIという、個別株と同じように買えて全米に投資できるものがある」という知識しかなく、最初にETFのVTIを買ったというだけの理由です。
そんな調子で投資初期にどんどんETFに投入しました(いっきに数百万円)。途中で投資信託にスイッチするのもコストがかかるので、今でもETFのVTIに投資を続けているというわけです。
どっちがいいかと聞かれれば、「どっちでもいい。あえていえば投資信託のほうが便利だと思います」と今は答えます。
パフォーマンスに大した差はありません。配当金を再投資する手間をはぶけたり、端数を余らせることなくきっかり1円単位まで投資に回したりできる点で、投資信託を利用するほうが有利だと思います。
いっぽうVTIは指値注文できたり市場開場時に好きなタイミングで売買できるメリットがあります。
しかし長期のインデックス投資ではこれらのメリットも有用とはいえません。実際、私は基本的に成行注文しかしませんし、売買タイミングもはかっていません。
それらの行為で劇的にパフォーマンスが上げられる見込みはほぼありません。
また、ETFのほうは毎年確定申告で外国税額控除をやって、2国で二重に課税された税金の一部を取り返す作業が発生します。
※この行為は必須ではありません。税金を取り返す権利を行使するかどうかは任意です。投資家の判断で棄権することもできます。
その点でも投資信託に軍配が上がると思います。(投資信託は二重課税調整制度があるため、外国税額控除の申請行為が不要です)
投資信託の二重課税調整制度についてくわしく知りたい方は、このリンクから日本証券業協会の資料をご覧になってください。※PDFファイルが開きます。
2.VTでもVOOでもなくVTIを選んだ理由はなんですか?
全世界株式でもS&P500でもなくなぜ全米株式インデックスを選んだか? ということですね。
それは、アメリカが経済の中心であり株式市場の時価総額の多くを占めているからです。
というのは正直あと付けで、本当はこの本に受けた影響が大きいです。
私が投資を始めるにあたって(正確には再開)、全米すべての株を持つというアイディアを得たのはこの本です。
これがVTでもVOOでもなくVTIを選んだ理由です。論理的と言うよりは直感的な判断ですみません。
しかしその判断は間違っていなかったと今でも思っています。
ではVTやVOOがVTIに劣るかというと、まったくそんなことはないと思います。
効率よくお金をふやすには、より広い市場の時価総額比インデックスファンドを持てばいいので、ベターな投資先は全世界株インデックスになると思います。
例えば「VT」や「eMAXIS Slim全世界株式インデックス」などです。
しかしそれらは信託報酬が比較的高めに設定されています。
VTの経費率は0.08%。対してVTIは0.03%、VOOも0.03%。
eMAXIS Slim全世界株式インデックスの信託報酬は0.1144%。対して楽天・全米株式インデックス・ファンド(いわゆる楽天VTI)は0.132%、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)は0.0968%、SBI-SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドは0.0938%です。
※2021年2月現在。
というわけで、理論上のぞましい全世界株式は比較的コスト高で、全米やS&P500は割安といえます。
トレードオフの関係になっています。しかし長期投資のパフォーマンスを大きく左右するほどのものではないと思います。
というわけで私は、資産形成のために投資する先として全世界株式、S&P500、全米株式どれでもいい、総合的に大差ないだろうと考えています。
きっとどれを選んでも正解です。
3.一括投資と時間分散購入(ドルコスト平均法など)、どちらがいいですか?
インデックスファンドへの長期投資という前提として回答すると、一括投資が望ましいです。
まず、「時間分散」というワードは忘れてください。
現金をリスク資産に変えて長いあいだ市場にさらしておくことが効率的に資産をふやすことなので、今あるお金を一括投資するのが基本です。
……という答えをすると、きっとあなたはこう言うでしょう。
「いや、一括投資はこわいです」
そうじゃないんですよ。リスク管理(安眠できるように下落幅を調整すること)は、タイミングではなく資産配分でおこなうものなんです。
かんたんな例で示します。
今あなたの手元に100万円あるとして、あなた自身のリスク許容度に合わせて、たとえば20万円をVTIなどのインデックスファンドに"一括投資"して、80万円を現金のまま残しておく。これが資産配分を主眼とした一括投資です。(リスク資産:安全資産=20:80)
※一括投資は「全額を一度に投資しろ」ということではないです。
1ヶ月間たって、リスク資産が値動きし「VTI 15万円+現金 80万円」に変化したとします。
(給料でも臨時収入でも)投資に回せる現金が追加で10万円工面できたら、6万円をVTIに一括投資し(時価を気にせず)、4万円を現金のまま残します。
すると「VTI 21万円+現金 84万円」となります。結果、リスク資産:安全資産=20:80になりました。もともと設定したバランスに戻したことになります。これをリバランスといいます。
次回またお金ができたら、同じように20:80になるようにリスク資産と安全資産(現金)とに振り分けていきます。
このように、自分が設定した資産配分を維持していくのが投資行動のすべてです。
――サラリーマンであれば毎月 投資元金がうまれるので、"結果的に"時間分散と同じようになります。それはそれでいいんです。
「時間分散をやろう」とするのがよくないです。時間分散を主眼におくと、リスクを取りすぎたり、逆に取らなすぎて非効率になったりします。
最適なリスクを取れる理想の資産配分を維持するだけでいいのです。時間分散は結果であり目的ではありません。資産配分。これを主眼にしてみてください。
――なお、今回の例では現金比率80%でしたが、これは人それぞれです。下落リスクにそなえる最適な現金比率は、リスク資産がどのくらい下落する可能性があるかと、投資家自身の下落許容度がどれくらいあるかで変わります。
簡単な計算式に当てはめて算出できるようにしましたので、下記の記事を参考にしてください。
4.VTIをどのタイミングで買えばいいかわかりません!/ 高くて買えません!
1つ前のQ&Aと重複しますが、余裕資金があるなら常にそのとき買えばいいと思います。株価は気にしません。迷ったら「今買う」です。(ただし決めたリスク資産&現金の比率を維持して)
とはいえお気持ちもわからなくないです。
想像するに、「買った後に下がったらどうしよう。高いところで買ってしまうのは損だ」などと考えているのではないでしょうか。
どんな銘柄もファンドも、価格の推移を事前に予測することはできません。
かといって押し目(株価の小さな谷)を待つ戦略も、望ましいとは言えません。VTIのようなインデックスは長期的にはどんどん上がっていくものですから。期待するような押し目が来ない可能性が大きいです。
買い時を見計らうことに関して、テクニカル分析もファンダメンタルズもたいして役に立ちません。少なくとも、こんな質問をするようなあなたには。
私もわかりません。しかし、武器もなく非力だからこその戦略はあります。単純に「タイミングを読まずに買う」ということです。
給料が入るたびでも思い出したときでもいいです。いつもその時の株価を気にせず買うと、あるときは安く買えて、あるときは高く買ってしまうことがあると思います。
長期投資なら、購入回数が生涯で何十回、何百回にのぼるはずです。すると、安く買えた回数と高く買った回数は平均化されていきます。
結局、ちょうどいい価格で毎回買ったこととほとんど同じになるわけです。(まあそう考えて差し支えないでしょう)
このように、貴重な自分の時間や脳みそのリソースを浪費せずに平均をとれる方法を私はおすすめしたいです。
――もう1つ。「高くて買えません」について。
これは投資初心者によくある勘違いです。
おそらく、過去のどこかの時点の株価、もしくは自分が購入したときの株価、平均取得単価、に対して「高い」とお思いなのだと思います。
株式投資において、過去の価格と比べることに意味はありません。
あなたが過去に買って持っているVTIの取得単価と、これから買おうとしている分の取得単価とは、切り離して考えてください。
そりゃあ、過去に安く買ったものは、これから先多くの投資パフォーマンスをもたらしてくれるでしょう。
でもそれは、(株価が高くなった今)あなたがこれから投資に回そうとしているお金とは別の話です。
これから先、未来のことを考えなければいけないのです。常に、「今と未来」を比較して投資判断するべきです。
人間は、過去に見た数字にとらわれすぎる傾向があります。(「アンカリング効果」でググってみてください)
そう考えると、「高すぎる」という感想が出ることが、過去を見て言っていることに気づくと思います。
過去は過去。未来を見ましょう。これから先、値上がりしていくと思うから買うんでしょう?
5.VTIを買うとき円貨決済していますか? ドル決済していますか?
私は常に円貨決済です。
為替レートの低いときをねらってドルを購入しておいたり、為替交換手数料(スプレッド)を安くあげるためにスプレッドが安価な証券会社を利用するなど、こだわってやっている方もいらっしゃるようです。
私は為替を読むことはできませんし、スプレッドにこだわるのも面倒なので、いつも円貨決済です。
厳密にはそれで投資のパフォーマンスがわずかに下がるかもしれませんが、利便性優先であきらめています。
為替のいいときをねらうためにお金を温存しておくほうがもったいないと考えます。
6.VTIのように米国市場のETFを買い付けてドル運用するのと、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)などの投資信託で円で運用、どちらがいいですか?
質問の後半部分について、もし「"為替リスクを負いたくないから"国内の投資信託を利用」しようとしているなら、決定的に間違っています。
日本国籍の投資信託でも、投資先が海外の株式なら、あなたの資産も為替の影響を受けます。
米国市場で買うETFは為替影響を受ける。ここまでは多くの人が理解していると思います。しかし、海外株に投資する国内籍の投資信託は為替影響を受けないと思っている方もいます。その認識はあやまりです。
よってこの質問への答えは、ありません。質問自体が間違っているからです。
どちらも為替リスクは負います。後者は、単に海外株を円貨決済で買っている、くらいに思えばいいかと思います。
こちらの記事も参考にしてください。
単に、ETFと投資信託どちらがいいか知りたいということでしたら、本記事質問1.をご覧ください。
7.株式市場のほとんどをインデックス投資が占めるようになったらどうなりますか?
難しいテーマなので受け売りでの回答とさせて頂きます。
一般的には、パッシブ運用(インデックスファンド)の比率が上がると、
→ 市場の効率性が悪化する
→ アクティブ運用の優位性が高くなる(アクティブ運用投資家が儲けられるチャンスが増える)
→ アクティブ運用の比率が上がり、パッシブ運用の比率が下がる
→ 市場の効率性が回復する
……という動きになると言われているようです。
どんなにインデックスファンドが増えても、市場平均を出し抜いて儲けようとするアクティブファンドはなくならず、自然と均衡が保たれるだろう、とのことです。
だから、あまり心配しなくてよさそうですね。
インデックス投資が拡大することについてのレポートや論文を読みたければ、私のTwitterのこのスレッドをご覧ください。
株式市場がインデックス投資だけになったらどうなる?
— 小淵(おぶち)????VTI長期投資?? (@obuchi35kara) January 26, 2021
そんな疑問に対するバンガード社の回答を紹介します。(2014年の記事)
難しい内容かもしれませんが、要はそんなに心配しなくてもよさそうってことです。https://t.co/pMutqVNRZw
8.債券も持つべきではないですか?
個人のポートフォリオのリスクとリターンを調整するため、という理由なら、別に持たなくていいと思います。
全米や全世界株式のインデックスファンド1種類と現金とで調整すればじゅうぶんだと思います。
例えば、資産配分を決めるにはまずどのくらいのリスクを負うかを考えることになりますが、「外国株式インデックス+現金」のポートフォリオではある程度かんたんに見積もれるのに対し、
「外国株式インデックス+債券+現金」ではかなり難しい計算になります。
それに、保有すべき最適な配分もわかりません。
市場と同じ株式&債券のバランスを個人のポートフォリオでも持とうとするわけですが、一体、何対何の割合が答えでしょう? 誰かが6:4や5:5がいいと言ったからそうする、ではよくないと思います。
また、もしそれが明確にわかったとしても、定期的なリバランスをするのに手間とコストがかかります。
そんなわけで私は、債券を個人の資産配分に入れるのはかなり難しいと思うのです。
――単に難しいからあきらめるのか? いいえ、そういうわけでもありません。ポートフォリオに組み入れる有効性が少ないとも考えています。
理由は2つあります。1つ目は、相関係数がわりと近い数字であることです。
多くの場面で、将来の外国株式と外国債券の相関係数は0.5付近と試算されています。
そこそこ強い正の相関であり、分散効果としてはあまり期待できません。
もう1つは、期待リターンが小さいことです。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の試算では、国内債券0.7%、外国債券2.6%としているようです。
物価上昇を加味すればゼロ付近かマイナスになりそうです。
興味のある方はGPIFの資料も見てみてください。(PDFが開きます)
基本ポートフォリオの変更について │ 年金積立金管理運用独立行政法人
9.出口戦略をどう考えていますか? 取り崩すのに抵抗はないですか?
我が家では出口戦略について明確なものは策定していません。お金が必要になったときに売る。それだけです。
今は妻も私も会社員として働いており、生活費も投資への入金も2人の給与からまかなえています。
早期引退予定も今のところはなく、会社員でいられるかぎりは「お金が必要になる」場面はおとずれそうにありません。
※たまの贅沢や散財をするお金は、投資に回さずに貯めることで工面しています。
「お金が必要になる」のは我が家では、労働をやめて収入がなくなったとき(退職・引退)や、大病、加害事故の賠償金、なんらかのトラブル、といったところでしょうか。
何歳で仕事をやめようとか何がなんでもFIREを目指そうとか、未来が不確定すぎて考えるのをやめました。
――「取り崩す抵抗」は私はまったくありません。
むしろ取り崩すためにVTIを買っています。
VTIや株を買うことを何か特別なイベントと思わないほうがいいです。
私は、現金で貯蓄するのと変わらない感覚でいいと思います。ATMから引き出すように、インデックスファンドを一部分ずつ売ればいいんです。
苦労して投資に回した貴重な財産を売却するのが惜しいという気持ちかもしれません。
そんな"気持ち"、邪魔なだけです。お金のことですので感情ではなく理性的に考え判断されたほうがいいかと思います。(「メンタルアカウント」などでググってみてください)
――取り崩すときに株価が暴落していたら売りづらい、という不安を覚える方もいるかもしれません。
……いいじゃないですか。一度に全部売るわけじゃないんですから。と私は思います。売らずに残しておいた部分はそのうち値上がりしますよ。きっと。
どうしても取り崩すのに抵抗があるなら、取り崩さなければいいんです。そのぶん働きましょう。何年か働いているうちに株価も戻っているんじゃないですかね。
そもそも、株式投資は自分の思い通りにはいかないものです。それを織り込んでゆるい計画を立てるのがいいと私は思っています。投資の成果に頼った人生設計をしてしまうのはとても危険なことです。
こちらの記事も参考にしてください。
10.投資信託で全米株に投資しているのですが、インカムゲインがなく複利の力が効いているのか不安です。
複利の力とは、元金にも利息にも利息がつくという意味です。
インデックスファンドを保有しているだけで複利の力の恩恵は受けられます。
売り買いを繰り返したり、高配当投資に傾倒したりする必要はありません。
インカムゲインを再投資することだけが複利の力を得る唯一の方法だと思っているのなら、それはあやまりです。
こちらの記事を参考にしてみてください。
11.保有しているインデックスファンドに含み益が出ています。ここまま持っていても複利の力が働かないので、一旦売ってすぐ同じファンドを買い直すべきですよね?
質問10.同様、これもよくある勘違いです。
複利の力とは、「売却&再購入」だけで実現するものではありません。
こちらの記事をご覧ください。
12.VTI以外に買う予定のETFはありますか?
ありません。

この記事がためになったと思ったら、クリックおねがいします☆